公開日:2021.10.19 最終更新日:2023.01.18
年々、オンラインでのショッピング需要は増加していましたが、コロナ禍以降はその伸びがさらに大きくなったように感じます。総務省統計局が公開した「ネットショッピング利用世帯の割合の推移」によると、特に65歳以上の世帯の利用が急速に増えたようです。
そうした状況の中、これから自社ECサイトを開設し、オンライン市場に参入しようとしている企業も増加傾向に。しかしその一方で、「ECサイトの立ち上げをどう進めていけばいいかわからない…」という声もよく聞くようになりました。そこで本記事では、はじめてECサイトを立ち上げる方に向けて、ECサイト開設のポイントをご紹介します。
ECサイトを立ち上げるときは、さまざまな手順を踏む必要がありますが、大まかな流れは以下のようになります。
①商品選定
②ニーズ調査
③目標設定
④制作方法の選定
当然のことですが、オンラインで取り扱う商品を決めないままECサイトを立ち上げても意味がありません。基本的にはECサイト立ち上げの段階で、すでに販売する商品は決まっていると思いますが、もし取り扱う商品が決まっていない状態でECサイトを開設しようとしていたら、まずは商品選定からはじめましょう。
オンラインで販売したい商品があっても、その商品にニーズがなければ、コンバージョンを生むことはできません。また、ニーズがあっても小さいものであるならば、わざわざコストをかけてECサイトを用意しなくても、自社コーポレートサイトなどを活用して、受注から発送まで完結させることができるかもしれません。ECサイト立ち上げの前には、取り扱う商品がオンラインショッピングにおいてニーズがあるかどうか調査・検討しましょう。
最終的にどれくらいのコンバージョンを生み、売上につなげていくか。ECで実現する目標を設定しましょう。目標を定めれば、どの商品をどれくらい販売すればいいか見えやすくなりますし、取り扱う商品数にも見当をつけやすくなります。ECサイト全体の規模もわかるようになるので、自社の規模に最適なECプラットフォームを選べることにつながります。
一般的に自社ECサイト制作では「ショッピングASP」「ECパッケージ」「フルスクラッチ」「オープンソース」のいずれかの方法で構築します。それぞれの特徴を把握したうえで、自社に適した方法でECサイトを制作しましょう。各制作方法の詳細は次の項目でご説明します。
この流れを把握しておけば、ECサイト制作を効率よく進められます。自社ECサイトを立ち上げる方は覚えておきましょう。
ここからは、前項で取り上げたECサイトの制作方法について解説します。ショッピングASP、ECパッケージ、フルスクラッチ、オープンソースがどのようなものか、どういう企業に最適かチェックしていきましょう。
※ここでは、モール型ECではなく、自社ECサイトの制作方法についてご紹介します。モール型ECについては『モール型ECサイトとは?主な種類からメリット、費用など徹底解説』の記事をご覧ください。
導入費用 | 月額費用 | 独自 カスタマイズ | 事業規模 | 制作期間 | |
---|---|---|---|---|---|
ショッピングASP | 0円~数万円 | 0円~数万円 | 基本不可 | 一億円未満 | 短期間 |
ECパッケージ | 数万円~数十万円 | 数万円~数十万円 | 可 | 一億円~ | 短期間~長期間 |
フルスクラッチ | 数百万円~数千万円 | 数十万円~数百万円 | 可 | 数十億円~ | 長期間 |
オープンソース | 数十万円~数百万円 | 数万円~数十万円 | 可 | 数億円~ | 長期間 |
ASPとは、アプリケーション・サービス・プロバイダーのことです。ASPが提供するショッピングカート機能を備えたシステムを使って、ECサイトを開設することをショッピングASPと言います。
ショッピングASPでは、事業者のサーバー環境下でECサイトを開設するので、自社でサーバーを用意する必要がありません。ECサイトに必要な基本的な機能が備えているので、ECの経験やスキルが少ない担当者でも、容易にECサイト制作、管理が可能です。
無料版から有料版まであり、ほかの立ち上げ方法に比べて初期費用やランニングコストが少額で済みます。デザインや導線などの設定も直感的な操作で簡単にできます。ですが、事前に用意されたプラットフォームを利用するため、基本的にはサイトに独自性を出すことができません(有料版であればカスタマイズ可能としているプラットフォームも有)。
■主なショッピングASP
・BASE
・STORES
・MakeShop
・Shopify
ECベンダーが提供するECサイト運営に必要な機能をひとまとめにしたものをECパッケージと言います。ECベンダーによって制作されたパッケージを利用することから、ショッピングASPと似ていますが、ECパッケージの場合は自社でサーバーを用意するため、自由にカスタマイズし、ECサイトに独自性を出すことができます。
ただし、パッケージの購入やサーバーの契約、システムの保守管理に費用がかかります。ベンダーによりますが、初期費用で数百万、月額費用で数十万円という料金形態が多いです。また、システムの管理にはある程度の知識を持つ人材を確保する必要もあります。
ショッピングASPよりECサイト運営の自由度が高くなるぶん、立ち上げに必要なことも増えます。なお、最近ではサーバー費用や保守管理などのコストを抑えられるクラウド型のECパッケージも提供されています。
■主なECベンダー
・Orange EC
・ecbeing
・えびすマート
フルスクラッチは、イチからECサイトを制作することを言います。自社で必要な人材を確保して制作する方法、制作会社に委託する方法の2つがあります。ECサイトに独自性を出せることはもちろん、スムーズにさまざまな施策を企画・実行することも可能です。
たとえば、ユーザビリティ向上のために高速PDCAを回したりと、ベンダーのプラットフォームやパッケージでは、対応が難しかったり、手間がかかったりする作業をスピーディーかつ思い通りに進められます。
ですが、フルスクラッチは、ゼロベースでECサイトをつくり上げていくので、ほかの立ち上げ方法よりコストが膨らみます。また、社内で制作する場合、サイト制作や商品管理、在庫管理、物流システムとの連携に関して専門知識を持つ人材を確保することも。さらにECサイトの構築が長期間に及びます。
オープンソースは、一般に公開されているプログラムを自社で保有、またはレンタル契約しているサーバーにアップロードしてサイトを制作する方法です。インターネット上に公開されているプログラムを使うことから、初期費用を抑えることができます。また、自由にビジュアルや導線などをカスタマイズすることも可能です。
ですが、フルスクラッチと同様、サイト制作や商品管理、在庫管理、物流システムとの連携に関する専門知識を持つ人材を確保しなければ、思い通りにECサイトを運営できない可能性があります。運用管理を制作会社に委託する選択肢もありますが、効率的な運用が難しくなったり、関わる人間が多くなることでセキュリティの強度が落ちたり、ランニングコストが膨らんだりするというデメリットが挙げられます。
■主なオープンソース
・EC|CUBE
・Magento
・WordPress
ECサイトを立ち上げ後、ただ待っているだけではコンバージョンを増やすことはできません。コンバージョンを増やし、売上をあげていくためには、まずECサイトに購買行動を起こすユーザーを集める必要があります。一般的にECサイトのアクセスアップでは、以下の3つの施策が取り入れられることが多いです。
SEOは、Googleなどの検索エンジンにおいて、Webサイトを上位に表示することを目指す施策です。日本語では検索エンジン最適化と言います。検索エンジンを使うユーザーは、特定のキーワードで検索後、上位にあるWebサイトから閲覧していきます。自社のWebサイトを上位表示させることができれば、多くのユーザーにサイトを訪問してもらえます。立ち上げたばかりのECサイトでも大きな集客効果を期待できます。
また、ユーザーが使うキーワードのなかには、購買行動につながりやすいタイプがあります。たとえば、「商品名 通販」「商品名 おすすめ」などです。これらのキーワードに対応したページをサイトに用意し、上位表示させていれば、購買モチベーションのあるユーザーを集めることができます。それがコンバージョンの増加につながります。このことから、ECサイトのアクセスアップと同時に、コンバージョン増加施策においても、SEOは大きく貢献してくれます。
Web広告は、文字通りWeb上に表示する広告のことを言います。よく耳にするリスティング広告やディスプレイ広告がそれにあたります。Web広告は、認知拡大に効果的な施策で、ECサイトの認知を広げるときにも大いに役立てることができます。
ただし、それぞれのWeb広告の特性をよく把握し、目的によって使い分けなければ、期待するような成果を得られず、予算だけ消化してしまうことに。アクセスアップで取り入れる際は、どういう目的で広告を使うのか。どの広告にどれくらいの予算を使うか。よく検討することがすすめられます。
SNSの活用は、ECサイトのアクセスアップにおいて重要な施策となります。特にECサイトと相性が良いのがInstagramです。Instagramの各種投稿にはECサイトへの導線となるショップタグをつけることができます。
さらに、Instagramユーザーの多くは、興味を持った商品があれば、最終的に購買行動を起こす傾向にあります。アクセスアップはもちろん、コンバージョンを増やす目的としてもInstagramは取り入れたいSNSと言えます。
このような施策を取り入れながら、ECサイトのアクセスアップに取り組んでいきましょう。
ECサイト運営は失敗が伴うものでもあります。具体的にどのような失敗があるのか知っておけば、ECサイトづくりを始める前に、ECサイト立ち上げの失敗例をチェックしておきましょう。
ECサイトを開設すると、日本全体がマーケットになります。店頭販売とは異なり、訴求できるユーザーが増えることから、商品の販売数も伸ばせることが期待できます。
ですが、それは商品にニーズがあってこそ得られるものです。その商品を求めているユーザーがいなければ、販売数を伸ばしていくことはできません。売れないものをどうにかして売ろうとしても、骨折り損になるだけです。ECサイトを開設する際は、最初に商品力を見極めることが重要になります。
すぐに成果を出したいために、短期施策に注力するケースは多いものです。特にリスティング広告は、購買行動を起こすユーザーを集めやすいことから、多くの広告費を費やしてしまいがちです。
しかし広告は、成果を得るために常に回していなければならない施策のため、CPA(CV一件あたりの獲得単価)を下げられないという側面も。また、短期施策に頼り切りでは、成果が出なかったときに大きなコストとなります。
ECサイト運営では短期施策だけでなく、SEOやSNSといった中長期施策を取り入れることも重要です。
ECサイトを立ち上げるにあたり、ECサイトの運営方法や収益向上に関する支援をしてくれる、外部のコンサルタントにサポートしてもらうケースが多々見られます。たしかに、はじめてのECサイト立ち上げで、ノウハウや経験も何もないときに、ECコンサルタントは強い味方となってくれます。
ですが、すべてをECコンサルタントに丸投げしていると、どのような運営をしているか不透明となります。よく聞いてみたら、販売戦略については広告代理店に丸投げしているなど、お粗末な対応をしている場合もあります。
ECサイト運営を円滑に進めるうえで、コンサルタントに依頼することは、有効な手段のひとつです。ただし、コンサルタントを活用する際は必ず社内に担当者を用意することが大切になります。
ECサイトの立ち上げ自体は決して難しいものではありません。ですが、立ち上げ方によっては、ある程度、Web制作やECに関する知識・スキルを持つ人材が必要になります。取り扱う商品や規模、予算などを鑑みたうえで、自社にぴったりな方法でECサイト開設に取り組むとよいでしょう。
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